「ちょっと話せる?」



ぼんやりしてるあたしの前に、その人の足が1歩近づいた。


――カツンっと、ヒールの音を響かせて。



その足元に目をやって、あたしは言葉を失った。


顔には見覚えがないけど、このクツの記憶は残っていたから。



2週間前の、薄暗い自転車置き場。


そこで、見たんだ。



ピンク色のリボンがついたクツ。


持ち上がるヒールのかかと。



……ハル兄と……キス、してたヒト。