背後から、温かい腕と、それから吐息が、あたしを包んだ。 「ありがとう」 「うん…」 人前で、まだここさっき中継したところで、人の目もあるのに。 やっぱずるいよ… 離れてと言えないあたしも、あたしだなぁと思いながら、目を閉じて深呼吸を繰り返した。 「さてと。帰ろうかなぁ」 「あ、江口さん!」 「奏」 「かなで、さん?」 「奏」 「かなで…」 「よろしい」 なんだこのやりとりは。