君の胸に鳴る音を、澄んだ冬空に響かせて




…振り返ることをしなかったあたしは、結局その後、江口さんと顔を合わせることはなかった。

フリータイムが終盤にさしかかり、trapはみんな準備をしに楽屋に戻ったからだ。


あたしがもとの場所に戻ったときには、すでに美加もサラさんもトウマさんも戻っていた。


「江口さんと楽しめた?」

美加の質問に、サラさんもトウマさんも興味を示す。


「…別に、全然、楽しくなかった」

「は………?」

…何かあったのかと聞かれても、別に何もなかった。

ただ、あの自己中な男1人にあたしはさんざん振り回されて、挙げ句険悪なムードになったことくらいだ。