駅前にあるちょっとした広場。
この時間帯のこの場所は、仕事を終えて帰路につく人々に溢れかえっている。


私はいつもと同じように、広場の中央にある噴水の正面に腰掛けた。
そして相棒のケースを開けて、弦の調整を始める。


私の趣味はギター。
しかもアコースティック。
ご覧、ギターを持ってるってだけで中年サラリーマンの皆さんがチラチラ私を見て通り過ぎて行く。


寒さで指がちゃんと動かせないので、駅中の売店で使い捨てのカイロを買った。


…吐く息が白い。


よし、弦の音色も問題ないようだ。
私はすぅっ、と冷たい冬の空気を吸い込む。