「ただいまー…」
誰もいない小さな部屋に、私はいつもの様に声を掛ける。返事は無い。あったら逆に怖い。
だけど、毎日帰ってくる度にこう言うことで、安心感と言うか、何故か落ち着いた。
私は部屋の電気を点けた。雑誌やら何やらが散漫し、上京した時に持ってきて未だ開けずじまいの荷物が場所を取っている。正直足の踏み場もあまり無い。
私は鞄を床に放り投げた。当然自分の所為なんだけど、こんな光景を見たら「ただいま」と言った直後の安心感は一気に吹き飛んだ。
更に日頃の心身の疲れも伴って、なんかムシャクシャする。
そんな時私は、上京した時に持ってきた相棒に大抵手を伸ばし、そいつを左肩に掛ける。
ついさっき投げた鞄に一冊のファイルを入れて、そっちは右手に持った。
折角の誕生日だしね。
私は電気を消し、部屋から出た。
