【短編】瞳




「ちゃんと冷やせって」



え……?


呆れた顔をして立ってた矢野君。

蛇口をひねり勢いよく飛び出す水に、少しずつ冷やしてた私の手を、掴んでつけた。
矢野君の手まで濡れてる。


手……大きいなぁ。


後から見たら、矢野君しか見えない位大きな体。


てか背中が熱い……
密着し過ぎだよ。
全体が熱くて、多分体中が真っ赤になってたと思う。



「お前さー、トロイよなー?
あ……今回は、鈍臭いのか」



少し優しい表情に見えるのは、私の思い込みかな?



「どっ……鈍臭くな…くないかな?」



って鈍臭いって言ってるようなもんじゃん。



「ぷっ! 認めた」



あ……笑った?



――ドクンッ


何これ?
心臓が大きく高鳴った。


私、嫌われてない?
笑ってくれたよ?
睨んでなかったよね?