【短編】瞳



何となく波ちゃんに、言い出せなくて……。
でも瞳は、矢野君の事ばかり追うし……。


“何でキスしたの?”
聞く事も出来ない。




「妃芽、そこ火気をつけてね?」

「うん。……あっつ!」

「えっ?! 大丈夫?」



熱っ!

ボーとし過ぎて鉄板に手があたってしまった。


火傷しちゃった……。



「うっうん。ちょっと冷やして来るね」

「待って、一緒行くよ」

「だ……大丈夫だよ。波ちゃんは、食べてて?」



折角、来たのに私に付き合ってたら、勿体ないもん。

鈍臭いな……私。




「痛ーッ」


赤くなった指先を見て小さく溜息。
水道から流れる水の勢いを蛇口をひねり、抑えた。


チョロチョロ流れる水に、
ちょっとずつ火傷で赤くなった指をつけてた時だった。