【短編】瞳



私の横で、膨らます矢野君の大きな浮輪。

シャチ?
イルカ?


あ……。

矢野君の腕の筋肉……綺麗。



「何?」

「えっ? うぅん!」



横目で睨まれ、大きく大袈裟なくらい首を振った。


凝視し過ぎたかな?
また睨まれちゃった。


俯いてた私の前に、また大きな影……。
今度は、人じゃなくて、矢野君の大きな浮輪。


ふと顔をあげ、浮輪を持つ綺麗な筋肉の腕を見てたら……。



軽く触れるだけの優しいキス。



「トロイ……」



そっと離れた唇から放たれる低くて、優しい声。



そのまま浮輪を持って矢野君は、皆が遊ぶ海へと向かった。



放心状態の私を残して。