【短編】瞳




「え? 矢……野君?」


すげー驚いた顔で俺を見るのに……
また瞳合わせねーし。



「一緒行くわ……コンビニも寄るし」



無理があるか?

准ん家ん前に、コンビニあるし。
でも嘘なんか、咄嗟に出るわけねーじゃん。



「え? 准君家は?」

「行く。お前、また波ん家、戻るんだろ?」

「戻る……けど?」

「なら大丈夫だろ」



それとなくないか?
……俺なら確実に疑うな。



なのに、何となく納得してくれた桜田にホッとした。





黙って肩を並べて歩いてると聞ける気がする。

聞きたかった事を……聞いてみるか?



「お前……俺の事、嫌いなの?」



これだけの言葉を言うのに、すげードキドキと心臓がうるさい。

この沈黙も、それを倍増させる。




なのに……。



あれ?
返事は?





「おい?……なぁ?……なぁ!」

「へっ?」



……何すっとぼけた顔してんだよ!?



「聞いてた?」