【短編】瞳



「何か、忘れてた事あったとかで一回帰って、また来るの!」

「ふーん……」



で?

何で、んな興奮してんだ?



「“ふーん”じゃなくて! チャンス!
じゃなくて危ないしね?
送って帰って、連れて帰って来て?」

「……波が着いて行かねーの?」



普段なら絶対行くだろ?



「今日は、学なの! 学じゃなきゃ駄目なのよ」

「はぁ!?」

「ちょっと強気で押してね?
あっ! 早く行って? ほら!」



何だ?

強気?
押す?

それで失敗したんだけど?


でも、一人は危ねーよな。
しゃーねぇ……行くか。





すぐ、小さな後姿を見つけて一瞬悩んだ。


何て声かければいいんだ?


でも何故か走り出そうとしてる背中に向かってかけた言葉は……

『おいっ』

だった。