【短編】瞳




「もー大丈夫か?」

「あっ? うっうん」



え……。
初めて、瞳そらされた?


今まで、ビビッてても瞳は……瞳だけは逸らされた事なかったのに。



「……桜田?」



俺が名前を呼んだだけで、ビクッと肩を震わした。

なぁ……俺、そんな恐い?




だよな……
最悪な事したもんな。



でも……



それなら怒れよ。
何か言えよ。

瞳だけは逸らさないでくれよ。




「妃芽ー大丈夫?」

「あっ! 波ちゃん!」



あ……

俺に見向きもしないで行くんか?


つい、今まで俺にスッポリ包まれそうだったのに。

ほのかに、お前の香りだけ残して波のそばに走って行った。



いつになったら……



好きだ……って、
言わせてくれる?