【短編】瞳



俺も空気入れるふりして、そばに座った。

まぁ本当に入れるのあるんだけど。



頼むから逃げたりしないでくれよな……。


座った俺の横から動かない。
良かった。



「貸せよ」



思わず言ってしまった。



だけど、桜田はその場に居たまま。


それが嬉しくて……
空気を早く入れ過ぎた。


もう終わちゃったじゃん。
俺ってまじ馬鹿かも。

ゆっくり入れて何か話すとかあんだろ、普通。



……。

隣から感じる視線。

どうしていいかわからなくて、



「“ありがとう”とかないの?」



だーっ!
俺、感じわりぃー!



「あっありがとう!」



見た事もないような笑顔を向けられ、
ドクンッと大きな音をたてた心臓。



……何だよ。

今の笑顔……反則だろ。

やべぇ。顔熱い。





俺の浮輪デカすぎだからっ!
早く膨らまして海……跳び込みたい!