【短編】瞳



皆のところへ戻る間、波ちゃんの腕に絡み付いていた。


ふと、見上げると優しい笑顔。


「妃芽? どした?
学と何があったの?」

「えぇぇ?」

「私がわからない訳ないでしょ?」



そんな事を言うから、
……波ちゃん、魔女?
なんて思っちゃった。


波ちゃんには隠せない。
と言うか……隠し通せた事なんてない。


全てを話し終えた私に、

『ふぅーん』

と怪しい笑み。



「えっ? えっ?
何で笑ってるの?」



笑ってる理由が、わからず腕を掴む手を揺らす。

そんな顔も綺麗なのが悔しい!



「ねー妃芽って恋した事あった?」

「は? 恋?
今は、そんな話じゃなくてね?」

「そか。まだか」



はい?
波ちゃん?

納得してるけど。

恋が何?
……恋?


頭の中がパニックになってるのがわかってるのか、微笑んだまま待つ波ちゃん。
こんな時は、“何か”気付けって事……だよね?



……え?


顔が熱くなったのがわかった。



「やっと気付いた?」


ニヤッと零した笑み。