「…なにが面白くてあんたと一緒に食べなきゃいけないの」

「ほんとは嬉しいくせに」

「はい?」

「今日、1人なんだろ」

「…」


なんで知ってるんだ、コイツ。




二宮が言った通り、あたしは今日1人でお昼を食べるつもりだった。
そうしたかったわけじゃなくて、
いつも一緒に食べてる友達2人が
1人は欠席、もう1人は早退してしまって、
仕方なく1人で食べようとしていた。


ほんと、なんで知ってるんだろう。

1人が早退したのだって、さっきの授業中で。
二宮は寝ていたはずなのに…

めったになにかに興味を示さないくせに、
コイツはちゃんと周りのことは把握してるんだ。



あたしがなにも答えずにいると、
二宮はあたしの前の席に座った。



「…二宮は
いつも溝口くんと食べてるじゃん」

「そうだけど」

「いいの?
溝口くんは大丈夫なの?」

「大丈夫だろ
なんかどっか行っちゃったし」

「そっか…ありがと」

「あれ。一緒に食べていいんだ」


自分から言い出したくせに、
あたしの反応に二宮は目を丸くした。



「なんでよ」

「やだって言っていつもみたくぶっ叩かれるかと思った」

「失礼な奴」

「お前の普段の俺に対しての態度を考えたら
そう思われるのが普通だろ?」


そういつものような憎まれ口をたたいて笑った二宮の顔は
いつもより優しくて、そしてどこか嬉しそうだった。