「別に変な意味で言ったんじゃねぇよ。
単純に、葵衣に失礼だろ」

「でもさっきのはないでしょ。
司くん見た?
こいつが俺の頭思いっ切りぶっ叩いたの」

「見た。
あれは痛そうだったけど(笑)」

「だろ?マジこいつ暴力女だよ」

「さすが葵衣だな」




2人の会話はよく聞けばけっこうあたしに失礼なこと言ってたんだけど、
あたしの耳にその会話は入ってこなかった。




だって…


さっきからずっと

溝口くんの手があたしの頭の上に乗ってる。




ふと溝口くんを見上げると、一瞬目が合って。
あたしは時間が止まったような気がした。



(やばい…ドキドキする)




「…わっかりやすい女…」


「…ん、二宮いまなんか言った?」


二宮がなにか呟いた気がして聞き直したけど、
二宮は「なんでもない」って言って教室を出て行ってしまった。




「?
なんか二宮怒ってた?」

思わず溝口くんに聞いてみると、
頭の上にあった手がパッと離れた。

「怒ってたって言うより、不機嫌になったな(笑)」

「なんで?」

「…さぁ?(笑)」

「ほんと二宮ってわけわかんないよね」

溝口くんが意味深な笑い方をしたのを気にせず、あたしは言った。


「ある意味一番わかりやすいやつだけどな」