「うーさみぃ」




あたしの後ろの席でそう呟く、猫背の男。


二宮音弥。




「あ、葵衣、お前のセーター借してよ」

「はぁ?」

「お前は脂肪があるから寒くないだろ?」



あたしは机の上の教科書とノートを重ね、
二宮の頭を思い切り叩いた。



「いってぇ!!」


バンッ!という大きな音と二宮の声が、
授業中の教室に響く。






「そこ!うるさいぞ。…また神坂と二宮か」


呆れ顔であたしたちを叱る先生。



「だって先生!あたし悪くないよ!二宮が…」

「俺は事実を言っただけだろ」

「はぁ!?あんたが細っこいだけじゃん男のくせに!」

「スタイルが良いって言ってください」

「バカじゃないの!?」



「はいはいいいから。
喧嘩なら休み時間にやれ。
神坂、前向け。」


再び先生に叱られ、あたしは仕方なく前を向いた。



教室にはクスクスという笑い声が小さく響いていた。


…みんな、面白がってる。


ちくしょう。二宮、むかつく!!