「本当だ……信じてくれ」

 剣を地面に落とし、ベリルは懇願するように頭を振った。

「冥府の王ハーデスは俺の復讐を認めてくれた。だからこうして貴様の前に出てこられたのだ」

「復讐……そうだ、お前にはその権利がある」

 ベリルはつぶやき、覚悟したように苦笑いを浮かべる。

「私はお前を死なせてしまった……どうすれば助けられたのか考えても解らない」

「ハッ! そんな事で俺が貴様を許すとでも思っているのか」

 再び黒い煙が上がったかと思うと、現れたのは漆黒の巨大な野犬……ヘルハウンドだ。

 地獄の入り口に棲むという魔獣は、炎のような赤い瞳でベリルを睨み付けている。

「内臓を食い破られ苦しみにのたうち回るがいい」

[グルルル……]

 魔獣は、どこから噛みついてやろうかとベリルの周りをゆっくり回った。

「最後に何か言い訳する事はあるか」