それからしばらく、丘を臨む草原を見渡し歩く。

「!?」

 ベリルは、別の気配に剣を抜いた。

 何もない空間から、黒い煙のようなものが吹き出す。

「久しいな、我が友よ」

「!? その声は」

 現れたのは、かつての親友──

「レクシュ……」

「ようやく冥府から戻ってきたぞ」

 確かにレクシュだ。

 しかし、その姿は生前のものとはかけ離れていた。

 血の気の引いた顔とバサバサの髪、生気のない肌は冥府の住人そのもの。

「……っ」

 変わり果てた親友の姿に、ベリルは愕然とした。

「お前は親友に剣を向けるのか」

「どうして……」

 言葉を詰まらせたベリルに、レクシュはクックッと喉の奥から笑いを絞り出す。

「貴様に復讐するためだ。俺を利用して力を手に入れた貴様を許さない」

「違う! 私はお前を助けようと──」

「今更、嘘をつくな!」