リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「……さすがですな」

 出てきたのは老齢の男性。

 見た処、商人とも違うようだ。

「酒場から見ていたようだが」

「! 気づかれておりましたか」

 白髪交じりの栗毛に、赤茶色の瞳で青年の様子を窺いながらゆっくり近づく。

「かなりの強さとお見受けしました」

「何が言いたい」

 ななかなか言い出さない男に青年は眉をひそめた。

「失礼しました。わたくしの名はムナリアと申します」

 紳士的に応え、相手にも促すような視線を送る。

「ベリルだ」

 青年は少し呆れ顔で返した。

 ムナリアは確認するように頷くと語り始める。

「実はわたくしは、フェムトの南にある村の長老の1人です」

「……」

 南にある村といえば、ここからほど近い場所にトエレームという村があったな……とベリルは聞きながら考えた。