リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

 店を出て、別の酒場を探す。

 冒険者ギルドを探してもいいのだが、いかんせん彼の事はすでに多くのギルドに伝わっていて、難易度の高い仕事ばかりを勧められてしまう。

 ギルドの持つ情報網は侮れない。

 利益の高い情報はあっという間に広まって、気がつけばその渦中の真っ直中……という事がよくあった。

 酒場の主人に訊ねるか、客の会話に傍耳を立てる方がいい。

 渡り戦士と知って仕事を持ちかけてくる者もいる。

「……」

 ベリルは、グエンの話を思い返す。

 あの時、空気が一瞬にして凍り付いたような感覚が酒場を駆け抜けた。

 この町のどことなく張り詰めた空気はその魔女のせいなのか?

「ふむ……」

 ベリルは思案するように小さく唸った。