リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「やめておけ」

「あ?」

 言ったベリルを睨み付け、グエンは憎らしげな表情になる。

「ウワサというものは一人歩きするものだ。鵜呑みにして手痛い仕打ちには会いたく無かろう」

 グエンはゆっくりと立ち上がり威圧的にベリルを見下ろした。

「……」

 ベリルはその瞳を見つめ返す。

「……」

 エメラルドの輝き。

 神がその瞳を愛し、永遠の命を与えたとも伝えられている通りに美しい。

『神の力を持った英雄』

 そう聞いていれば、喧嘩をふっかけるほどにはグエンは馬鹿ではない。

「チッ」

 あからさまに舌打ちをして再び椅子に体を預けた。

「いいさ、譲ってやるよ」

 彼の精一杯の虚勢にベリルは薄く笑って酒場を出た。