リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

 その男、グエンは笑って近づいてくるベリルに鼻を鳴らした。

「相変わらず美しい」

 皮肉混じりの言葉。

 ベリルは「ありがとう」というように、小さく頷き軽くあしらう。

 硬い焦げ茶色の髪とブラウンの瞳、ベリルの腕の倍ほどもありそうな太い腕は酒場の女の肩に回されていた。

 ブレスト・プレート(胸当て鎧)を自慢げに装着している。

 彼がそれを自慢するのも頷ける。

 何せあの『ミスリル銀』で出来た胸甲なのだから……

 希少価値である金属『ミスリル』。

 加工しやすく硬い金属は、武器にもする事が出来る。

 それを持っているだけで、充分に見栄を張れるシロモノだ。

 このグエンという男は、名の知れた冒険者なのだが事あるごとにベリルに言いがかりを付ける厄介な相手である。

 女と間違えてベリルを口説き、こっぴどくフラれた処からそれは始まっている。

 あの時の出会いは運が悪かったとしか言いようがない──