リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「どういうんだ?」

 首をかしげ町を見渡す。

 しかし、これといった異常は無いようだった。

 よそ者に警戒している訳でもなさそうだし……一体、何に神経を尖らせているのだろうか。

 ひとまず仕事を探すため、酒場に向かう。

「……」

 酒場の看板が下げられた建物のドアを開くと、昼間から賑わいを見せていた。

「!」

 端の席に見慣れた顔が見える。

 ベリルはげんなりして、酒場から出ようと体を反転させた。

 が──

「いよーう、ベリル!」

「……」

 相手に見つかってしまった。

 口の中で舌打ちをして振り返る。

「奇遇だな、グエン」

 これでもかと表向きの笑顔で応える。