リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~


 朝──出発の準備を始め、昼近くに目的の町にたどり着いた。

 活気溢れる市場が建ち並び、行き交う人々は皆、笑顔を振りまいている。

 ここは

『はじまりの民』が住むという

『はじまりの町』。

 町の名は

『アルフォ・ルカド』。

 暁の女神エオスの子孫たちが住む町だ。

 とは言っても、その血はすでに薄く名残りすら見あたらなくなっている。

 晴れた空の下、笑いながら石畳の道を駆けていく子どもたち。

 声を高くして少女たちがお喋りに花を咲かせ、店の店主たちは手に手に「良い品物だ」と旅人に勧める。

「……?」

 なのに、何故だろう……張り詰めた空気がベリルの肌を微かに刺激していた。