リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「──っ」

 見事な馬だったのに……ベリルは苦い表情を浮かべて石像と化した馬を眺める。

 コカトリスの動きは予想以上に素早い。

 油断すればこちらもやられる。

 魔獣の爪とくちばしを剣で弾き、少しずつだが傷を与えていった。

 石化するのは生物だけらしい。

 致命傷を与えられれば……そう思った次の瞬間──

「うっ!?」

 コカトリスの鋭い爪の攻撃に、腕から血がにじんだ。

 石化する!?

 恐怖で身がすくんだ。

 しかし、ベリルの身は一向に石にならなかった。

 恐怖から安堵に変わり、絶望が心を支配した。

「これも……ドラゴンの力なのか?」

 つぶやいて、コカトリスに剣を振り下ろした。

 石化しないのなら相手はただの鶏と変わらない。