友を失い、失意のベリルを皆は英雄だともてはやす。

 宴は深夜まで続けられ村は今までにない盛り上がりを見せた。

「……」

 みんなが寝静まった頃、ベリルは厩(うまや)で馬の王から贈られた馬の首をさすり宙を見つめる。

「違う……」

 間違ってる。

 ベリルは唇を噛みしめた。

 大切な友を失ったのに、喜べるハズがないじゃないか。

 代わりになどなるものか。

 こんな結末のためにドラゴンと闘ったんじゃない。

 大きな過ちを犯してしまった事に、ベリルはまた強く目を閉じる。

 村人たちにあんな言葉を言わせた事も、また罪だ。

 罪は増えて脹らんでいく──

 ここにはいられない。

 ベリルは荷造りを始めた。

 村人たちは、ベリルを村の英雄に仕立てようとしている。