リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「人に迷惑をかけるような飲み方はいただけない」

 20代半ばと思われる青年は、淡々と言い放つ。

「!」

 馬面の男は、その青年の腰にたずさえられている剣に目が留まった。

「渡り戦士か」

 その言葉で巻き毛の男も視線を下げる。

 そして、青年の容姿をマジマジと眺めた。

 金髪のショートに明るい緑の瞳。

 その顔立ちは女性ならば息を呑むほどだった。

 だが、「渡り戦士」というには、いささか装備が軽すぎるようにも思えた。

 左の腰に提(さ)げられた剣は70㎝ほどと短く、身の丈もさほど高い訳でもなさそうだ。

 細身の体型には見合った剣かもしれないが、モンスターと渡り合える旅戦士とは到底、思えない。

 ましてや、たった1人で大陸を渡り歩く戦士などとは──。

 数人で旅(パーティ)をする冒険者ならば、数多くこの街にも訪れる。

 しかし、単独で大陸を渡り歩く者はそう多くはない。