ドラゴンは怒鳴って、口から真っ赤な炎をレクシュに放った。

「レクシュ!?」

 必死に手を伸ばすが、彼の姿は炎に包まれ声もなく転がった。

「……そんな」

 ガックリとうなだれるベリルを手から解放し、もはや何の抵抗も見せない青年を見下ろす。

[人間、名はなんという]

「……ベリル」

 輝きの失せた瞳で見上げ、応えた。

[お前の嘘に従って逃げようとした者でも哀しいか]

「当り前だ……私がそうしたのだ。誰が責められようか」

[己は死しても良いというのか]

「私などが生きているよりも価値がある」

 面白い……ドラゴンはそうつぶやき、ベリルに向き直った。

[ぬしのした事は大罪である]

「殺すなら殺せ」

[ぬしは誠実であり仲間を裏切らなかった。それに免じて褒美を与えよう]