『リンドブルム』

 騎士たちがこぞって紋章にするドラゴンだ。

 その紋章が表す意味は、

「力強さ」「雄雄しさ」「敵に対する容赦のなさ」「味方に対する寛容さ」

 そんなドラゴンに敵うハズもなかった。

 もっと早く気がつくべきだったのだ。

[……]

 ドラゴンは目を細め、腰を抜かしているレクシュを見やった。

 そうして、静かに低く問いかける。

[この者の言った事は本当か?]

「!」

 言葉を詰まらせたレクシュに、ベリルはゆっくりと頷いた。

「私の言葉に合わせるんだ」と目で示す。

「……そ、そうだ。本当だ」

 レクシュの言葉にベリルは、

「それでいい」とまぶたを閉じた。

[そうか、ならばお前は行くがいい]

「す、すまない……」

 そうつぶやいて背を向けた刹那──

[痴(し)れ者め!]