リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「丘ほどの財宝を抱えているんだそうだ」

 レクシュは嬉しそうに発して、続ける。

「そのドラゴンの心臓を取り出して食べると神の力が得られるそうだぞ」

 このとき、2人は共に25歳になっていたがレクシュはこの通り、冒険にしか興味が無く、ベリルは今まで言い寄られていた反動で恋人を持つ気にはなれなかった。

「そんなドラゴンを倒すだって?」

 ベリルは無謀とも言える彼の提案に驚きの声を上げる。

「お前がいてくれれば必ず勝てる。な? 一緒に力を手に入れよう」

「……」

 さすがのベリルもこれには躊躇した。

「無理だよ……」

「何を言うんだ! 折角のチャンスなんだぞ。お前も俺に守られてるだけの奴なんて言われなくなる」

「私は言われても構わないよ」

「俺は嫌だ。お前が弱いなんて言われるのは我慢ならない」

 ベリルは苦笑いを返した。

 彼に頼まれれば断れない。

 ベリルは仕方なく旅の準備を始めた。