狩りの腕も料理も、大工仕事にも文句の言いようが無いほどの腕前だったため、体を売る仕事を持ちかけられた時、しっかりと断る事が出来た。

 彼の容姿に言い寄る人間は多かったが、知恵のあるベリルを説得出来る者はいなかった。

 感情の起伏があまりないベリルは、野心を持つレクシュが少し羨ましくも感じていた。

 レクシュはいつも明るく、周りの者をも元気にさせる力がある。

 脇から2人を見た印象は、ベリルはただレクシュに守られているだけの優男に映っていたかもしれない。

 物静かな雰囲気と美しい姿のために、そう見られていただけなのだが……実の処、頼っていたのはレクシュの方だ。

 なんでも上手くこなし、知恵を働かせるベリルにレクシュは何かと相談していた。

 だからあの時も──レクシュは当り前のように、彼に話しを持ちかけた。


「! ドラゴン?」

「そう、あの山の向こうにある洞窟にドラゴンがいるらしい」

 レクシュは東にある遠くの山を指さして語った。