あれはもう、何百年前だったろうか──ベリルがまだ普通の人間だった頃、

 彼は小さな村で生まれた。

 西の辺境にある、ごくありふれた村だ。

 そこで生まれ、育ち……親友もいた。

 親友の名はレクシュ。

 大人しいベリルとは正反対の、明るく快活な野心家でもあった。

 栗色の髪にトパーズの瞳。

 彼はいつもベリルに諭していた。

「男なら強い力を求めるものだ」

「そうかな?」

 私は今以上の力は必要無いけど……笑いながら語るベリルに檄(げき)を飛ばす。

「何を言うんだ! 力が無ければ欲しいものは得られないぞ」

「……」

 そう言われればそうかもしれない。

 ベリルは早くに両親を亡くし、手先が器用で無ければ体を売るしか生きる術はなかっただろう。