「! ……」

 馬を走らせるベリルの眼前に、草原と森が広がる。

 遙かな遠い昔の記憶が呼び覚まされ、強くまぶたを閉じた。


 あの時、どうしていればこの運命から逃れられたのだろうか……

 何を選べば、私は正しく冥府への切符を受け取れたのだろうか?

『お前は誠実だ』

 それは私に対する皮肉なのか。

 それともあざけりの言葉なのか。

 何度、反芻(はんすう)しても、その答えは深淵に飲み込まれ胸は焼けるように痛みを沸き立たせる。


「……っ」

 胸ぐらを掴み、吐き出せない苦しみに顔を伏せ小さく震えた。

 季節の移り変わりも、人が人生の中で見る回数をとうに過ぎ、

「これは何人目の自分だ?」

 と誰かに尋ねたくなる。