リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「断った場合は?」

[勝手に渡れば良い]

 そうは言うが、渡ろうとすれば必ず荒れ狂い溺れさせようとするだろう。

 なかなかに狡猾な水竜のようだ。

「ふむ……」

 ベリルは対岸を見つめる。

 そして、河から遠く離れ岸を睨み付けるように馬の腹を蹴った。

[ハッハッ! 馬の脚などで飛び越えられるものか! 溺れて死ぬがいい]

 向こうの岸までの距離はおよそ20mほど。

 確かに普通の馬で越えられるような距離ではない。

「……っ」

 馬が岸を蹴ってジャンプしたそのとき、ベリルは剣を抜き逆手に持つと──

「シルフィリア……」
[なに!?]

 つぶやいた途端、強い風が馬の体を浮かせゆっくりと対岸に無事たどり着いた。

[キサマ! エレメンタル・ソードを持っているのか!?]

 荒い息を整えながらベリルは笑みを返した。