リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

 愛馬にまたがり、その首を優しくさする。

「世話になった」

「滅相もございません。我々の頼みを聞き届けて頂いてありがとうございます」

 それに笑顔を返し、ベリルは馬の腹を蹴って走り去った。


「……」

 ムナリアは、その後ろ姿を見つめる。

 昨夜、彼はムナリアに自分の素性を他言しないように言い聞かせた。

「私の名が広まるのは望む処ではない」

 そう言われれば口をつぐむしかない。