リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

 しかし参った、村人がいるおかげで動きにくくなってしまった。

「余計な事をしおって」

 目を据わらせてつぶやく。

 ベリルは、腰にある小さな革袋に手を突っ込み、何かを取り出して少年に後ろ向きで投げた。

「?」

「アミュレットだ。少しは防げる」

 手にすっぽり収まるサイズの護符だ。

 少年はその護符を握りしめた。

「なるべく避けろよ。こちらも守ってはいられん」

「は、はいっ」

「行け」

 ベリルが促すと、少年は駆け出した。

 それにマンティコアは反応したが、ベリルが剣を大きく振るとそちらに視線を向けた。

 それを確認し、再び剣を構える。

「持久戦といくか」

 そして少年を一瞥した。

「そこから動くな!」

 声を張り上げたあと、また小さく何かを詠唱する。