「あの……っ」

「なんだ」

 いつものようにぶっきらぼうだが険のない聞き返し。

「……エオス、のことなんだけど」

 震える声でか細く発した。

「! 彼女がどうした」

「私は……あのっ……」

「お前はエオスを嫌っていないようだな」

 エリスは意を決し、言葉を絞り出した。

「エオスの処にも……行ってほしい、の」

「!? ……何?」

 聞こえた言葉に思いきり眉をひそめる。

「どういう事だ?」

 聞き返すベリルから少し離れ、気まずそうに両手を前に組み降ろす。

「エオス……きっと今までずっと哀しい思い、してきたと思うの」

「!」

 人間を好きになるという罰を受け、冥府に旅立つ男たちをずっと見てきた。

「あなたなら……っ。あなたなら、死なない……」

「……」

 目を逸らしふさぎ込むエリスを見下ろして、ベリルは小さく溜息を吐き出す。