リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「! チッ……」

 岩陰に人影が! 魔獣はその気配に気づいて突進した。

 ベリルは舌打ちして何かを唱える。

「ヒッ!? ヒィ!」

 そこにいた男は、向かってくる魔獣に腰を抜かして動けなくなった。

[ガアァー!]

 飛びかかろうと魔獣がジャンプしたとき、目の前に炎の壁が地面からせり出した。

 ファイアウォールの魔法が、マンティコアの行く手を阻んだ。

 熱さで後ずさりする魔獣を見やり、ベリルは足早にその男とマンティコアの間に入った。

「もっと離れていろ」

「ご、ごめんなさい」

 10代後半ほどの男は、腰を抜かしたまま発する。

 ベリルは呆れて溜息を吐き出した。

 どうせ、ちゃんと倒すかどうか監視していた村人だろう。

 「倒した」と嘘をつき、金をせしめる輩もいるのは確かだ。