「人であるという前に、誰かを傷つける事を止めてはくれまいか」

「だ、だって……っ」

 何かを言い出そうとする子どもに、ベリルはその瞳を向ける。

「彼女が本当に呪いをかけているのかどうか……その真実を確かめもせず、刃を向ける事は間違っている」

 ベリルは男の子の頭にポンと手を置いてニコリと笑った。

「お、おじさんはなんでそんなにエリスを庇うんだよ」

「守りたいと思うからだ。彼女がお前たちを守ったようにね」

「エリスがおれたちを?」

「そうだ。守るための力を持っている。守りたいと思うからこそ、その力で戦ったのだ」

 ベリルは緩やかな瞳を見せ、静かに立ち上がる。

「それ自体がどうではない、それを使う者がどうなのだ」

 道を誤るな……去っていく子どもたちの背中にベリルは発した。