ベリルは短時間での詠唱を行えるが、問題はそのあとだ。

 強力な魔法というものは詠唱時間だけでなく、それを唱えたあとにも問題が待っている。

 魔法はその強さによっても精神力の疲労が増していく。

 もし強力な魔法を放ち、効果があれば良いが……効果が無ければその疲労で敵の攻撃を避けられない可能性がある。

 ベリルは単独だ、そうなった場合に敵の目を引きつけてくれる仲間はいない。

 そうこうしている間に、マンティコアはベリルを見据えて飛びかかる体勢をとっていた。

 怒りで、大きな体はさらにひと回りほど膨れあがっている。

「……」

 剣を構えて詠唱を始めた。

「……っ」

 突進してくるマンティコアの爪と尾の毒針をかわしながら詠唱を続ける。

 詠唱が終り、急ぐようにマンティコアから離れ小さく溜息を吐いた。