リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

 自然にベリルと女、グエンたちとブラックドラゴンという対峙になる。

「ここであの力は出せまい」

 女はワイバーンから降り、勝ち誇ったようにベリルに鼻を鳴らす。

「……」

 ベリルは苦い表情を浮かべた。

 確かにここで今、ドラゴンの力を解放すればグエンたちにまで被害が及ぶ。

 まだ制御しきれていない力をむやみに解放する事は出来ない。

「今の力で我に勝とうなどとは、なんという痴れ者」

 セシェリエルと名乗った女は、優雅に左手を挙げて赤く塗った爪を見せるように前に出す。

「……」

 クスクスと薄笑いを浮かべている女を見つめ、ベリルは小さく溜息を漏らしたかと思うと次には目を据わらせた。

「ババァがうるさい」

「!? なんだと!?」

「タハッ! 言いやがったあいつ」

 後ろでブラックドラゴンと戦いながら聞いていたグエンが吹き出す。