「貴様らを蹴散らし、再び侵攻しようぞ」

 女の言葉に、冒険者たちは馬を降りて構える。

「おい……あの女、見た目通りの年だと思うか?」

「そんな訳あるものか。私の予想では500歳は越えている」

 小声でベリルに問いかけたグエンだが、返ってきた言葉に「うへぇ~」と顔をしかめた。

「私とどっこいどっこいの年だな」

 しれっと発したベリルにグエンは目を丸くする。

 しかしすぐ、現れた影にバルディッシュを強く握りしめた。

[シャッ!]

 黒い皮に赤い瞳、体長は2mを優に超える翼の無いドラゴン……ブラックドラゴンが2体、2つに分かれた舌をチロチロさせ威嚇の声を上げる。

 知能はさして高くないが、彼らは酸のブレス(息)を放つ。

 ベリルは女に剣を構え、少しずつ間合いを詰めた。

「我の名はセシェリエル。我の名を呪いつぶやきながら冥府に旅立つがよい」