[ガオァ!]

 マンティコアは前足を突き出し、その鋭い爪をベリルに突き立てる。

「!」

 それを剣で弾き、素早くまた別の魔法を唱えた。

 ベリルの目前に30㎝ほどの炎が出現し、まだこちらを向いていない魔獣の背中辺りにそれは飛んでいく。

[ギャウ!?]
「む……これでは弱いか」

 さして利いていない様子のマンティコアに眉をひそめる。

 弱点が無い以上、どちらが先に疲れるかの持久戦になる。

「面倒な……」

 しかし、強力な魔法は詠唱に時間がかかってしまう。

 それを待ってくれるほど敵は甘くはない。

 詠唱時間というものは、それを行う個人の能力に比例する。

 一概に全ての者が同じ詠唱時間とは限らないのだ。

 簡略化し、短時間の集中で唱えられる者は多くはない。