朝──ベリルは準備を済ませ、エリスの家をあとにした。
指笛を鳴らして馬を呼ぶ。
駆けてきた馬に鞍(くら)を乗せ、ドアの隙間から見送るエリスに軽く手を挙げて町に向かった。
広場に向かうと、すでにグエンたちが集まっていた。
「ベリル」
「どうだ」
グエンを見下ろす。
討伐に向かう面々は、すでに準備を済ませているようだ。
「案内は誰がする」
「あの山に詳しいレンジャーがいた」
ベリルの問いかけにグエンが応えると、1人の男が手を挙げて一歩、前に出る。
30代ほどの男だろうか。草色のフード付きマントを羽織って、目つきは鋭い。
「案内、よろしく頼む」
ベリルがそう言うと、男は無言で軽く丁寧に会釈をし自分の馬に飛び乗った。
それが合図であるかのように、次々と馬に飛び乗る。
「……」
町の住人は、窓からそれを怖々と見つめていた。