リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

 ベリルはドアを開き、空を見上げる。

 欠けた月が細い雲に少し隠されて、星々はその輝きを競うように瞬(またた)いていた。

 今日の出来事を思い起こしながら服を脱ぐ。

 パシャリ……少しずつ足を沈めていく。

 腰まで体を沈めると、ゆっくり月明かりに照らされた水をすくい肩や胸に流していった。

「……」

 あの戦いで傷を負わなかった訳ではない。

 だが、その体には軽い痕も無く、きめ細やかな肌は誘うように暗闇に浮かび上がっていた。

 脱いだ服を手に取り、水に浸す。

 どす黒く変色した血は、そう簡単には落ちない。

 ましてや、オークの血は人よりもどす黒く緑がかっている。

 ある程度、汚れを落とし水から上がった。

「……」

 星空を見上げて溜息を吐き出す。そのあと、別の服に袖を通していった。

「……」
「……」

 途中でエリスと目が合う。

 エリスは「見つかった……」という風に、ゆっくり後ずさりして家の中に入っていった。