リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「……」

 エリスの瞳はさらに大きく見開かれた。

「……」

 再び沈黙──

「それって……」

「ああ、言わなくても解っている」

 余計な事を言ったとベリルは軽く一度、手を振った。

「男の神様にもさらわれた事があるってこ──」

「言いたがるな」

 そうしてしばらく2人は黙って紅茶を傾けていたが、ベリルがふと気がついてつぶやく。

「そういえば着替えねばな」

 昼間の戦いでかなり汚れている事に袖口を見てようやく気づいた。

「裏に小川があるわ」

「そうか」

 ベリルは立ち上がり、荷物から服を取り出して裏口に向かう。

 エリスはそれを見送って、コップを持ち洗い場に行く。