リンドブルムの剣~魔女が涙を流す夜~

「……」

 エリスは手に持っているコップを両手で強く握った。

「人が神になる事は意外と簡単でね」

「!」

 おもむろに発せられた言葉に顔をあげる。

「しかし、神が人になる事は難しい」

 元々、下位にいる我々は上を目指せるが初めから上位にいる者が下位へと下がるのは困難を要する。

「どういう理屈でかは説明しづらいがね。そういうものなのだ」

 エリスは解ったような解らないような顔をして紅茶に口をつけた。

「神同士の争いに巻き込まれるのも勘弁したい……」

 ベリルはげんなりして肩を落とす。

「え?」

「あれは見られたものではないぞ。人の意思など無視されまくりで死なないくせに殺し合いの喧嘩を始めやがる」

 よほどの事だったのか、ベリルの口調が少し荒くなる。

「神様同士が……?」