「サラマンディア」

 ベリルがぼそりと発した途端に、炎の渦が大きなトカゲの姿を形作りオークを焼き払っていく。

「なんだ……こりゃあ」

 グエンはただ呆然とそれを見つめていた。

「ふむ……ドラゴンの力を解放したのは久しぶりだが、制御が難しいな」

「! ドラゴン? お前、神の力を持ってるんじゃなかったのか」

「噂というものは己の意思とは関係なく広まるものだ。他にも数あるだろう」

「あ~確かに……」

 グエンは頭をポリポリとかいた。

 ベリルに関する噂は数多いが、神の力というものがグエンにとっては最も信憑性があったのだ。

「……っ」

 ベリルはそれからオークどもを倒していったが、さすがに長く解放し続けてはいられないらしく、強くまぶたを閉じたかと思うと次には瞳の色を戻した。

「! お、オークが退いていくぞ」

 グエンの声に、ベリルはそれを確認して深い溜息を漏らす。