「オークは本来、夜行性だ。夕刻が迫ってきているとはいえ、太陽が隠れる瞬間を見逃してはくれまい」

 上空ではワイバーンが旋回している。グエンはそれを苦々しく睨み付けた。

 徐々に、黒い影は大地を響かせて大きくなっていく。

「その馬は馬の王からの贈り物だ。お前を乗せ、勇敢に戦ってくれるだろう」

 エリスに目を向けず、眼前の敵を射抜くように語る。

 地鳴りのごとき足音と叫び声、小刻みに大地が震えているのが解る。

 オークの先頭が50mまで迫ってきた時──ベリルは口の中で唱え、右手を前に示した。

 ドオオォォ! という轟音と共に巨大な炎の壁がせり出し、オークを焼き払った。

「でけぇ……こんなファイア・ウォール初めて見た」

 グエンが消えていく炎を眺めて感嘆の声をあげる。