鍋の中身をかき回し、エリスは気まずそうにしていた。

「私はベリル。改めて礼を言う」

「……いいんです」

 こちらに決して目を向けず、家の中でも黒いヴェールを外さない。

 ベリルがいるためだろう。

「私は何もしない。ここはお前の家だ、主人がくつろがないでどうする」

「あ……ごめんなさい」

「何故、謝るのだ」

 ベリルは困ったように眉間にしわを寄せた。

 そしてまた沈黙が訪れ、さすがのベリルもこれには悩んだ。

「私がいるせいならば出て行くが」

 言って立ち上がるとエリスは慌てたように数歩、近づく。

「あ、あっごめんなさい。違うの、いていいから」

「それならば良いが」

 言われてベッドに腰掛ける。

 どうしたものかな……どうも気まずい。

 エリスは暖まったスープを木製の器に注ぎ、ベリルに手渡す。